ポイントの仕訳方法|ポイントの私的利用時と付与時についても解説

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クレジットカードのポイントの仕訳方法

「クレジットカードで貯めたポイントを事業で使いたい」

「事業用の支払いで貯めたポイントをプライベートに使っていいの?」

個人事業主の場合、クレジットカードのポイントは私的にも事業にも使うことができますが、適切に会計処理を行う必要があります。

また、事業内容によっては顧客にポイントを付与する、顧客がポイントを使用して商品代金を支払うなどのケースもありますが、そういった場合も会計処理が必要です。

ポイントに関する仕訳は複雑ですので、しっかりと会計処理を理解しておきましょう。
今回はポイントの仕訳について詳しく解説していきます。

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この記事の監修者

手塚大輔(てづか・だいすけ)ファイナンシャルプランナー/証券外務員

地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を担当。ファイナンシャルプランナーの資格を有する。

法人事業者がポイントで経費を支払ったときの仕訳方法

法人事業者が事業用の支払いによってポイントを受け取ったとき、または受け取ったポイントで事業経費を支払ったときの仕訳はどのようになるのでしょうか?

仕訳を行うタイミングは、ポイントを受け取った時ではなく、ポイントを使ったときです。また、ポイントの仕訳方法としては「現金支払額」で処理する方法と、「仕入値引」または「収入」で処理する方法に分かれます。

ポイントで経費を支払ったときの仕訳の方法について、詳しく解説していきます。

仕訳を行うタイミングはポイントを「使ったとき」

受け取ったポイントについて、仕訳を行うのはポイントを使ったときです。

ポイントを受け取っただけでは、実際に何か得をしたわけではありませんし、金銭を得たわけでもありません。

場合によっては、未使用のままポイントが失効してしまうこともあるでしょう。

実際に金銭的に得をするのは、受け取ったポイントを使って支払いをしたときです。

そのためポイントについて仕訳を行うタイミングは、ポイントを受けとったときではなく、ポイントを使ったときということになります。

また、売り手がポイントを付与した際も同様で、仕訳の必要はありません。

売り手側からみて仕訳が必要になるのは、買い手がポイントを使用して支払いを行ったときです。

では、実際に法人がポイントを使って経費を支払った時にどのような方法で仕訳を行うのか詳しく解説していきます。

現金支払額で処理する場合の仕訳

現金支払額で処理する方法とは、ポイント使用分を支払金額から控除してシンプルに仕訳する方法です。

例)『5,000円分のポイント』を30,000円の事務用品を購入する際に使用し、不足分25,000円分は事業用のクレジットカードで支払った。

借方 貸方
消耗品費25,000円 未払金25,000円

現金支払額で処理する方法においては、ポイント分を控除した金額を支出として仕訳するだけです。

このケースにおいては、クレジットカードで支払ったのは25,000円だけですので、消耗品費として25,000円を計上します。

現金支払額で仕訳する方法は、実際に支払った金額だけを経費計上する、非常にシンプルで仕訳しやすい方法です。

一方で、ポイントで値引きされる前の金額や、実際の値引き額が把握できないというデメリットもあります。

仕入値引または収入で処理する場合の仕訳

ポイントで値引きされる前の金額や、ポイントによる値引き額を把握できる仕訳の方法として、一つは「仕入値引」という勘定科目を使用する方法があります。

例)『5,000円分のポイント』を、30,000円の仕入れ用商品の購入に使用し、不足分25,000円分は事業用のクレジットカードで支払った。

借方 貸方
仕入30,000円 仕入値引5,000円
未払金25,000円

ポイント使用分については「値引きを受けた」と解釈し、「仕入値引」という勘定科目を使用します。
仕入値引は仕入勘定の控除項目として商品仕入高から控除します。

仕入値引という勘定科目を使用することによって、実際の仕入れ商品の金額や、ポイントによる値引き額を把握することが可能です。

ただし、仕入値引は仕入れに関する支出にしか利用できない勘定科目です。

仕入れではない消耗品などの購入でポイント使用した場合は、仕入値引ではなく「雑収入」という勘定科目を使用します。

例)『5,000円分のポイント』を、30,000円の事務用品の購入に使用し、不足分25,000円分は事業用のクレジットカードで支払った。

借方 貸方
消耗品費30,000円 雑収入5,000円
未払金25,000円

この場合は、ポイント還元分を収入とみなし、雑収入として処理します。

この仕訳方法も、実際の金額やポイントによる値引き額を把握しやすい方法です。

事業用の支払いで貯めたポイントを事業で使用する際には、現金支払額または仕入値引、収入のいずれの方法でも処理することができます。

自社にとって最も管理しやすい方法を選択するとよいでしょう。

ポイント還元率も参考にして事業用の法人カードのおすすめを見てみましょう。

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個人事業主がポイントで支払ったときの仕訳方法

個人事業主の場合、クレジットカードのポイントは、事業とプライベートのどちらの支出にも使用可能です。

事業支出によって付与されたポイントをプライベートで使用しても、またその逆の場合でも、ポイントを使用することに問題はありません。

ただし、ポイントを使用したときには会計処理を行う必要があります。

個人事業主がポイントで支払いをしたときの仕訳について、ケース別に詳しく解説していきます。

事業で得たポイントを私的支出に使った場合

事業での支払いによって獲得したポイントは、事業所得の扱いとなります。

具体的な仕訳例をみていきましょう。

例)事業用として5万円の事務用品を購入した際に還元された『5,000円分のポイント』を、プライベートの買い物で支払いをする際に使用した。

借方 貸方
事業主貸5,000円 雑収入5,000円

事業での支払いによって獲得したポイントを事業主が私的に利用したことになるため、「事業用資金を事業主に貸した」という扱いになり、『事業主貸』という勘定科目を使用します。

事業としてはポイント還元によって収入を得たことになるため、『雑収入』という勘定科目を使用し、使用したポイント分を事業所得として計上します。

ポイント還元分を私的に使用したとしても、「事業所得等の業務に関して資産等を購入した際に獲得したポイントについては、その業務の付随収入に該当し、事業所得等となる。」と国税庁は述べています。

引用: 国税庁|企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について

つまり、事業での支払いにより獲得したポイントを、私的に使用しても事業所得として扱われるため、「事業所得を事業主に貸した」という形で仕訳を行うことになるのです。

私的に貯めたポイントを事業の支出に使った場合

次に、プライベートで貯めたポイントを事業経費の支払いで使用した場合の仕訳についてみていきましょう。

例)プライベートの旅行代金として5万円を支払った際に還元された『5,000円分のポイント』を、事業で使用する事務用品を購入する際に使用した。

借方 貸方
消耗品費5,000円 事業主借5,000円

購入した物品は事務用品ですので、『消耗品費』という勘定科目を使用します。

「事業主から事業資金を借りた」という扱いになり、『事業主借』という勘定科目を使用します。

このケースでは、使用したポイントは事業支出によって得たものではないため、事業所得とは区別して計上しなければなりません。

そのため「事業主借」という勘定科目を使用し、一時所得として扱います。

一時所得は特別控除額として50万円を控除することとされており、ポイントやその他の一時所得の合計額が年間50万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。

また、ポイントで代金の一部を支払い、残りを事業用のクレジットカードで支払った場合の仕訳は次の通りです。

例)プライベートで貯めた『5,000円分のポイント』を、事業で使用する2万円の事務用品を購入する際に使用し、不足分の15,000円は事業用のクレジットカードで支払った。

借方 貸方
消耗品費20,000円 事業主借5,000円
未払金15,000円

ポイントを使用して支払った分は「事業主借」として仕訳し、事業用のクレジットカードで支払った分は「未払金」としてクレジットカードの支払日まで負債として計上します。

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売り手側のポイントの仕訳方法

販売促進のために、自社でポイントを発行し顧客に付与している事業者の方は多いでしょう。

また、複数の店舗・サービスで使用できる共通ポイントプログラムを導入しているケースもあります。

ここでは、顧客にポイントを付与したときと、顧客がポイントを使用したときの仕訳について詳しく解説していきます。

顧客にポイントを付与した場合の仕訳

上述したように、顧客にポイントを付与したときには、仕訳の必要はありません。

例)顧客に1万円の商品を販売し、『1,000円分のポイント』を付与した。顧客はクレジットカードで購入代金を支払った。

借方 貸方
売掛金10,000円 売上高10,000円

ポイントを付与した時点では、ポイントに関する仕訳は行わず、単純に売上についてのみ仕訳しておけば問題ありません。

顧客がポイントを使用した場合の仕訳

顧客がポイントを利用したときには、会計処理が必要です。

例)顧客に1万円の商品を販売した。顧客は『1,000円分のポイント』を使用し、不足分の9,000円をクレジットカードで支払った。

借方 貸方
売掛金9,000円
売上値引1,000円
売上高10,000円

ポイントで値引きした分は、売上勘定からの控除項目である「売上値引」という勘定科目を使用することが一般的です。

一方で、ポイントは販売を促進するために必要な経費であるという捉え方もあります。

この場合には、ポイント還元分を販売促進費として計上することが一般的です。

仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
売掛金9,000円
販売促進費1,000円
売上高10,000円

顧客が使用したポイントを値引きと考えるのか、あるいは販売促進費と考えるのかは、会社によって異なります。

自社の考え方に最も近い方法で仕訳を行うようにしましょう。

クレジットカード会社から付与されたポイントを顧客が使用した場合

顧客がクレジットカードのポイントを使用して購入代金を支払った場合には、特別な仕訳は必要ありません。

例)顧客に1万円の商品を販売した。顧客はクレジットカードに貯まっていた『10,000円分のポイント』を使用して支払いをした。

借方 貸方
売掛金10,000円 売上高10,000円

顧客が楽天ポイント、Tポイント、dポイントなどポイントプログラムの各ユーザーのアカウントに貯まっているポイントを使用した場合には、特別な仕訳は必要ありません。

商品を販売した事業者に対しては、後日商品やサービス代金からクレジットカードの手数料が控除されたものが支払われます。

通常の売上と同じように仕訳を行いましょう。

なお、クレジットカード会社に支払う手数料は経費として、クレジットカード代金の入金時に次のように仕訳を行います。

例)クレジットカード代金の入金日になり、手数料1,000円が控除され9,000円が入金になった。

借方 貸方
普通預金9,000円
支払手数料1,000円
売掛金10,000円

新収益認識基準導入によってポイント仕訳が変わる

2021年4月より、一部の監査が必要な大企業には、企業会計基準委員会が規定した「新収益認識基準」が適用され、ポイントの仕訳が変更になります。

新収益認識基準とは何か、変更後のポイント付与時の仕訳と、ポイントを顧客が使って決済したときの仕訳について詳しく解説していきます。

新収益認識基準が適用される企業とは?

新収益認識基準が適用される企業について、国税庁は次のように定めています。

  • 連結財務諸表及び個別財務諸表の両方ともに、同一の会計処理を適用
  • 中小企業(監査対象法人以外)については、引き続き企業会計原則に則った会計処理も可能

引用: 国税庁|「収益認識に関する会計基準」への対応について(P3、P20)

中小企業は従来の会計処理の方法を引き続き使用することが認められているので、新収益認識基準が適用されるのは大企業です。

新収益基準とは「収益を認識するルールを統一化を図るもの」です。

従来のルールでは、売上の認識について詳細な決まりがありませんでした。

そのため、企業によって売上を認識するタイミングに違いが生じ、実態としては同じ売上であるにもかかわらず、企業によって売上を計上するタイミングに違いが生じてしまいます。

このような問題点を是正しするものが、国際的なスタンダードに合わせるために、新収益認識基準です。

ポイントに関する仕訳については、ポイントを付与した時には収益とせず負債として扱い、顧客がポイントを使用した時に収益として認識する(仕訳する)と定められています。

新収益認識基準におけるポイントを付与したときの仕訳

新収益認識基準では、収益を認識するタイミングは、「履行義務の充足による収益の認識」と規定されています。

ポイントは付与したときには「将来的に履行しなければならない債務」という考えになるので、この時点では収益の認識は行いません。

クレジットカードで3万円の商品売上に対して、ポイントを3,000円付与した場合の仕訳は次の通りです。

例)顧客に3万円の商品を販売し、『3,000円分のポイント』を付与した。顧客はクレジットカードで支払いを行った。

借方 貸方
未収金30,000円 売上高27,000円
契約負債3,000円

付与したポイントは、将来、顧客がポイントを行使したら支払いをしなければならない債務になるので、「契約負債」という勘定科目を使用してポイントを分けておきます。

新収益認識基準において顧客がポイントを使用したときの仕訳

新収益認識基準で収益を認識するタイミングは、顧客がポイントを使ったときです。

顧客が3,000円のポイントを使用して3万円の商品をクレジットカードで購入した場合の仕訳は次のようになります。

借方 貸方
未収金27,000円
契約負債3,000円
売上高30,000円

新収益認識基準においては、ポイントを付与したときには「将来支払うべき債務」と考えて、「契約負債」勘定で処理をしておきます。

その後、顧客がポイントを利用したときに初めて収益を認識し、契約負債勘定を取り崩して売上を計上します。

この記事のまとめ

事業の経費にポイントを使った場合の仕訳は、法人か個人事業主によって異なります。法人の場合には事業経費の支払いで得たポイントは事業経費の支払いで使用します。

一方、個人事業主のポイントの仕訳は「誰が貯めたポイントなのか」「何の目的で使ったのか」によって仕訳が全く異なるのでケース別の仕訳の方法を理解しておきましょう。

また、ポイントを付与した仕訳は、中小企業と新収益認識基準が適用された大企業では異なります。従来通りの仕訳、新収益認識基準における仕訳それぞれを理解し、適切に処理を行ってください。

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