クレジットカードの知識
個人事業主が開業前にクレジットカードを作るメリットと開業前後の審査の違い
投稿日:21.09.15
更新日:24.05.23
開業を予定しているなら、事業用のクレジットカードを開業前に作っておくのがよいでしょう。
クレジットカードの申し込みには審査がありますが、開業前と開業後では審査の視点が全く異なるからです。
開業前にクレジットカードを作るメリットや開業前後の審査の違い、開業後に審査に通過するポイントなどについて詳しく解説していきます。
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この記事の監修者
手塚大輔(てづか・だいすけ)ファイナンシャルプランナー/証券外務員
開業前にクレジットカードは作っておくべき?
会社員を退職後に開業を予定している場合、会社員のうちにビジネスで使うクレジットカードは作っておくべきか、迷うところです。
現在、使っていないカードがあるのであれば新たに作成する必要はありませんが、「開業したら新たに専用のカードが欲しい」と考えている方は、開業前にカードを作っておいた方が賢いと言えます。
プライベートと事業用のクレジットカードは分けるべき
大前提として、プライベートと事業用のクレジットカードは使い分けるべきです。
個人用のクレジットカードで事業経費を支払うことは可能であり、特にカードを使い分けていない個人事業主も多くいます。
しかし、個人の支出と事業の支出が1枚のカードになっていると、次のような問題が起こります。
- 経費を使いすぎてしまっていても気づきにくい
- 事業のみの資金繰りを把握できない
- 事業と私的支出が混じり私的支出を事業経費として計上してしまう恐れがある
その点、クレジットカードをプライベート用と事業用に分ければ、経費の管理が簡単になり、不正のリスクもありません。
個人事業主の方はクレジットカードを事業用とプライベート用に分けた方がよいでしょう。
会社を退職前の方が圧倒的に審査に通りやすい
会社を退職してからよりも、開業前の会社に在職している時の方がクレジットカードなどの審査には圧倒的に有利です。
- 退職前の方が勤続年数が長い
- 退職前の方が収入が高く安定している
- 個人事業主は収入が低く不安定
これらの理由から、退職後は著しくクレジットカードやローンなどの審査で不利になります。
「退職前にクレジットカードを作っておくべき」と言われる最も大きな理由が、退職した後は審査に通過できない可能性が高くなるためです。
「法人名義のカード」は開業前に作れないので注意
法人名義のクレジットカードの場合は、法人が登記されてからでないと作ることができません。
開業前にクレジットカードを作っておいた方が有利なことは間違いありませんが、法人名義のクレジットカードを開業前に作ることはできないので注意してください。
「開業前」と「開業後」クレジットカードの審査の違い
開業前と開業後では、クレジットカードの審査の視点は180度と言っていいほど大きく異なります。
開業前の会社員の方が審査では有利になり、開業後は審査に通過するために固定電話なども用意しなければなりません。
開業前後でクレジットカードの審査がどの程度変わるのか、詳しく解説していきます。
退職前は安定した給与所得者で審査に有利
退職前は、会社から給料を受け取っており、収入は安定しています。
さらに、その会社に長年勤務している場合は、審査でさらに有利になります。
ところが退職して開業すると、審査上の属性は「開業直後の小規模事業者」という扱いになります。
ただでさえ規模が小さく不安定な上、開業直後ではクレジットカードの利用代金の支払いをしていけるだけの売上を確保できるかどうかも不透明です。
そのため、退職前の給与所得者の方が圧倒的に審査で有利となります。
開業後は事業の業績も審査される
開業後にクレジットカードに申し込む場合には、代表者個人の収入や個人信用情報だけでなく、事業の業績も審査されます。
業績が悪ければ審査に通過できないこともありますが、開業直後の個人事業主の業績は一般的に苦しいですし、多くの個人事業主がその後も節税のために利益をミニマムにしています。
そのため、個人事業主である限りは、基本的にあらゆる審査で不利になるものです。
開業前であれば、審査の対象となるのは勤務先企業の規模や本人の年収です。
ある程度の規模の企業で安定した収入を得ていれば、審査で不利になることはほとんどないので、やはり開業前の方が審査で有利になります。
開業後は固定電話も必須
開業後は勤務先電話番号に固定電話がなければ、審査に落とされてしまうことがあります。
個人事業主の方の中には、固定電話を持たずに携帯電話のみという人も多いかもしれません。
しかしクレジットカードの審査においては、固定電話を所有していない事業者は実在性が疑われてしまいます。
「事業を行っているのであれば、事業用の連絡先として固定電話番号があるのは当然」といいう考え方に基づくものであり、固定電話がない事業者は審査でマイナスになります。
一方、開業前の会社員であれば、固定電話番号がないことはマイナスになりません。
開業しても固定電話を引く予定はないという人は、開業前にクレジットカードを作っておく方が得策です。
クレジットカード以外に開業前に準備したいこと
開業前に準備すべきことは、クレジットカードだけではありません。
口座やローンもできる限り開業前に準備しておきたいところです。
特に個人用のローンは開業後になると著しく借りにくくなってしまうので、必ず開業前に借りておきましょう。
クレジットカード以外に、開業前に準備したいことを解説していきます。
事業用の銀行口座
開業後すぐにクレジットカードや各種料金の引き落とし口座として設定できるよう、事業用の銀行口座は先に作っておきましょう。
開業後でも普通預金口座は難しい審査なしで作成することはできますが、開業前に作成しておいた方が便利です。
なお、銀行口座も法人名義と屋号名義で作る場合には、法人登記を終えた後か開業届を出した後でしか作成することはできないので注意してください。
必要なローンは先に組む
クレジットカードと同じく、あらゆる個人ローンは開業前に借りた方が審査で有利です。
住宅ローンや自動車ローンなど、必要なローンは必ず開業前に組んでおきましょう。
特に住宅ローンは審査が厳しく、個人事業主の場合には安定した収益を少なくとも3年間は継続した状態でないと借りることができません。
個人事業主として独立した後、数年間は個人ローンを組むことはできないので、開業前に住宅ローンや自動車ローンが必要な人は借りておいた方がよいでしょう。
なお、事業に必要な開業資金は開業後に借りることも可能です。
開業後にクレジットカード審査に通るポイントとは
開業後はクレジットカードの審査は不利になります。
しかし、開業後だからと言って必ずしも審査に通過できないわけではありません。また法人カードの場合は、開業後でないと作成することができません。
開業後にクレジットカードの審査に通過するためには、次の3つのポイントを押さえましょう。
- 個人カードではなく法人カードへ申し込む
- 信用情報を綺麗にしておく
- 事業が軌道に乗ってから申し込む
開業後にクレジットカードの審査に通過するための3つのポイントについて詳しく解説していきます。
個人カードではなく法人カードへ申し込む
開業後には個人カードではなく、法人カードへ申し込みましょう。
個人カードは開業前の方が審査において有利ですが、法人カードは開業後でなければ申し込むことができないカードです。
つまり法人カードなら開業後だからと言って個人カードよりも審査で不利になることはありません。
個人事業主でも申し込むことができる法人カードは多いので、開業後は個人カードではなく法人カードへ申し込むようにしましょう。
信用情報を綺麗にしておく
開業後にクレジットカードに申し込む場合も、個人信用情報は必ず確認されます。
- ローンやクレジットカードの延滞はしない
- 他のクレジットカードやローンの申し込みから半年以上の期間を空ける
クレジットカードの申し込み前にこれらを徹底することで、綺麗な信用情報で審査を受けることが可能です。
開業後の審査では代表者個人の信用情報は非常に重視されるので、できる限り信用情報を綺麗にした上で申し込みましょう。
事業が軌道に乗ってから申し込む
開業後すぐに申し込みをせず、ある程度事業が軌道に乗ってから申し込むのも有効な方法です。
事業継続年数が長くなり、さらに収支が黒字になれば返済能力が高くなるため、クレジットカードの審査において有利となります。
開業後しばらくの期間は申し込むのを少し我慢して、事業が軌道に乗ってから申し込むことで審査に通過できる可能性は大きくなるでしょう。
開業後におすすめの法人カード3選
会社を退職し開業した後は、事業が軌道に乗るまでは審査において不利になります。
しかし審査のポイントをしっかりと押さえ、審査難易度がそれほど高くないカードであれば十分に審査に通過できる可能性はあります。
開業後でも審査に通過しやすいクレジットカードとしては次の3つをあげることができます。
- 三井住友カード ビジネスオーナーズ
- セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレスカード
- NTTファイナンスBizカード レギュラー
開業後でも審査通過のチャンスがある3つのクレジットカードについて詳しく解説していきます。
三井住友カード ビジネスオーナーズ
三井住友カード ビジネスオーナーズ
年会費 | 永年無料 |
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還元率 | 0.5〜1.5%※ |
国際ブランド | |
電子マネー | |
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開業後でも審査に通過できる可能性のある、三井住友カードの中小企業代表者もしくは個人事業主向けのカードです。
年会費が永年無料でありながら補償が充実しているのが特徴で、最高2,000万円の海外旅行傷害保険が付帯します。
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さらに次のようなビジネスサービスで優待を受けることも可能です。
- アスクルサービス
- 日産レンタカー
- タイムズ カー レンタル
- アート引越センター
ポイント還元とビジネスサービスが充実しているので開業後の事業者のビジネスを力強くサポートしてくれるでしょう。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
年会費 | 無料 |
---|---|
還元率 | 0.5% |
国際ブランド | |
電子マネー | |
|
※プロモーションを含みます
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カード発行月の翌々月末までに50,000円(税込)以上のショッピング利用で永久不滅ポイント1,000ポイント(5,000円相当※)がもらえる(※1ポイント5円相当のアイテムと交換した場合)
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エックスサーバー、クラウドワークス、マネーフォワード、モノタロウなどでの支払いでポイントが4倍になります。
IT系のスモールビジネスオーナーに向いているカードだと言えます。
アメックスのブランド力も高いので、少ない年会費でハイステータスのクレジットカード保有を希望する方にはメリットがあります。
NTTファイナンスBizカード レギュラー
NTTファイナンスBizカード レギュラー
年会費無料のビジネス用クレジットカードとして有名です。
限度額は80万円までと少ないですが、開業間もない個人事業主であれば金額的に不足することはないでしょう。
国内と海外の旅行傷害保険やショッピング保険も充実しているので、年会費無料のカードとしては十分な付帯サービスを受けることができます。
年会費無料のカードですので審査難易度もそれほど厳しくなく、開業から間もない個人事業主の方も審査に通過しやすいでしょう。
この記事のまとめ
クレジットカードは会社を退職し開業した後よりも、開業前の会社員のうちに作成しておいた方が得策です。
ただし、法人カードであれば開業後に契約することができ、ビジネスシーンで活用できる特典が多数あります。
開業前よりも開業後の方が審査は厳しくなりますが、固定電話を持ち、代表者の個人信用情報を綺麗にしておけば、ステータスの高くないカードであれば審査通過の可能性は十二分にあります。
開業前にすべきこと、開業後にすべきことをしっかりと把握して、開業の準備を滞りなく進めるようにしましょう。