法人カードが個人名義になる理由と名義貸しのリスクについて解説

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事業者名義で法人カードを契約しても、カードそのものの名義は事業者にはなりません。

カードはあくまでも個人に対して発行されるものなので、カード名義はカードを使用する経営者または従業員個人の名義となります。

カードの名義が従業員になるということについて、「カードを不正に使用されてしまうのではないか」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか?

確かに従業員個人にカードを渡すことには一定のリスクがありますが、従業員個人の名義とするからこそ様々な不正を防ぐことができます。

また、個人名義の法人カードを従業員に持たせるにあたって、いくつか注意しなければならない点があります。

法人名義のクレジットカードが使用者個人の名義となる理由や、従業員にカードを貸与する場合の注意点について詳しく解説していきます。

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この記事の監修者

手塚大輔(てづか・だいすけ)ファイナンシャルプランナー/証券外務員

地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を担当。ファイナンシャルプランナーの資格を有する。

法人カードの名義は使用者個人の名義になる

法人カードの名義は、カードを使用する個人の名義となるのが原則です。

クレジットカードの契約者が法人であっても、カードそのものはカードを使用する経営者または従業員個人に対して発行されます。

例えば、A株式会社の田中太郎という人に法人カードを発行した場合、カードの券面には『TARO TANAKA』と記載されます。

法人カードの名義がケースごとにどうなるのか、カードを使用した時のサインはどうすべきなのかという点について詳しく解説していきます。

社員が代表者のみの場合のカードの名義

社員が代表者のみの個人事業主が法人カードを作成する場合、カード名義は代表者の個人名義になります。

また、カードの契約者名義も代表者個人の名義になります。

従業員へカードを発行する場合のカードの名義

法人や個人事業主が法人カードを契約し、従業員に対して追加カードを発行する場合、カードに刻印される名義はカードを使用する従業員個人の名義になります。

例えば、株式会社AB商事の従業員の田中太郎という人に法人カードを発行した場合 、カードの名義は『TARO TANAKA』個人名になります。

契約者が法人であったとしても、カードに記載されるのは実際にカードを使用する人の名義であることを理解しておきましょう。

ビジネスカードを利用した時は個人名でサインする

個人カードであっても法人カードであっても、カードを使用した際のサインの名義はカード使用者の名義です。

そのため、法人カードを発行された従業員がカードを使用した場合、サインする名義は従業員の個人名になることを覚えておきましょう。

法人名でサインしても、そのサインは有効ではありません。

法人契約の場合は法人名義が併記されることも

なお、法人名義で法人カードを契約した場合、カード使用者個人名とは別に法人名を記載するクレジットカードもあります。

ただし、このケースでも法人名だけが記載されているケースはなく、個人名と法人名が併記されています。

法人名が記載されているカードであっても、カードの名義は使用する個人であり、サインも個人名を記載しなければなりません。

名義人以外にカードは使えない

クレジットカードは、名義人以外は使用することができません。

あらゆるクレジットカードの規約において、名義人以外は使用できないということが決められており、他人名義のカードを使用することは規約違反となります。

これは法人カードでも同じで、例えば法人名義で契約した法人カードでも、カードの名義人以外の人が当該法人カードを使用することはできません。

「同じ会社の従業員だから」と、1つの追加カードを複数の従業員に併用させることは規約違反にあたり、場合によってはカード契約を強制的に解除されるリスクもあるので注意しましょう。

複数の従業員にカードを使用させたい場合には、使用する従業員それぞれに追加カードを発行しなければなりません。

法人カードの支払い用口座

法人カードは事業者である法人または個人事業主の名義で契約しますが、カードの名義はカードを使用する個人になります。

では、支払用の銀行口座はどの名義になるのでしょうか?

結論としては、法人名義で契約している場合は法人名義の口座、個人事業主が契約している場合は代表者個人名義または屋号名義の口座から、それぞれ引き落としになります。

法人カードは「使うのは個人」「支払うのは事業者」というのが原則です。

法人カードの支払い用口座について、法人契約した場合と個人契約した場合、それぞれのケースについて解説していきます。

法人契約の場合は法人名義の銀行口座から引き落とし

法人契約の法人カードは、法人名義の銀行口座からの引き落としになります。

法人で契約している場合には、個人名義の銀行口座から引き落としになることはありません。

従業員が使った経費を会社の口座から支払いできるのが、法人カードの大きな特徴です。

個人事業主の場合は代表者個人名義の銀行口座から引き落とし

個人事業主が法人カードを契約した場合には、代表者個人名義もしくは屋号名義の銀行口座からの引き落としになります。

基本的に代表者個人名義の銀行口座であれば、どの口座でも引き落とし口座として設定できますが、プライベート用の口座で設定すると公私の支払いが混在し管理しづらいため、事業用の口座か屋号の口座を設定するようにしましょう。

法人カードの名義が使用者個人である理由

そもそも事業者名義で契約した法人カードの名義が、なぜカード使用者個人となるのでしょうか?

主な理由は次の2つです。

  • 誰が使ったのかを明確にするため
  • 名義人以外の不正な使用を防ぐため

カードが適正に利用されるために、カードの名義は個人でなければなりません。
また、個人名義である方が、事業者にとってもメリットがあります。

法人カードの名義が使用者個人である2つの理由について、詳しく見ていきましょう。

誰が使ったのかを明確にするため

法人カードの名義を個人名義とすることによって、誰がカードを使用したのかが明確になります。

仮に法人カードの名義が事業者で、誰でも使用できるとした場合、誰が何の目的でカードを使ったのかがわかりません。

カード名義が個人名であることで、誰が何にいくら使ったのかを把握することができるので、事業者にとって経費管理の観点から安全と言えるのです。

名義人以外の不正な使用を防ぐため

クレジットカードは、名義人以外使用することができません。

仮にクレジットカードの名義人を事業者とした場合、誰が使ったかがわからず、場合によっては事業者とは無関係の人間がカードを使用する可能性もあります。

カードの名義を個人名とすることによって、無関係の人間が不正にカードを使用するリスクを排除することができるのです。

個人名義の法人カードを使用する際の注意点

法人カードは不正利用を防ぎ、従業員一人ひとりの経費使用の責任を明確にするために、カードを使用する個人名義となっています。

そのため法人カードの申し込み時や契約中は、次の4つの点に十分注意してカードを使用しましょう。

法人カード使用の注意点

  • 従業員間での使い回しはできない
  • 法人名が併記されているカードでも個人名でサインをする
  • 追加カード発行時に社員の与信は審査されない
  • 従業員や代表者の名義や会社名を変更する方法

個人名義の法人カードで注意したい4つのポイントについて詳しく解説していきます。

従業員間での使い回しはできない

カードを使用することができるのは、カードの名義人だけです。 たとえ同じ会社に勤務している場合でも、従業員間でカードの使い回しをすることはできません。

複数の従業員にカードを使用させたい場合には、必ずカードを使用する従業員の人数分の追加カードを発行するようにしてください。

追加カードの年会費を節約したいなどの理由で、カードを使い回すことは絶対にやめましょう。

法人名が併記されているカードでも個人名でサインをする

法人名が併記されている法人カードであったとしても、カードの名義はあくまでも個人です。

そのため、サインが必要な場面では必ずカード名義人である個人の名前でサインをしましょう。

サインに会社名を併記する必要はなく、個人名だけのサインでOKです。

追加カード発行時に社員の与信は審査されない

追加カードの名義は、従業員個人になります。

しかし、追加カードを発行される従業員個人の勤続年数や年収は審査の対象とはならず、あくまでも審査されるのは事業者であることを覚えておきましょう。

なぜなら、カードの利用代金は法人が支払うためです。

ただし、個人事業主が法人カードを作る場合と、法人代表者個人名義で法人カードを作成する場合は、代表者の個人信用情報等が審査されます。

代表者が信用情報ブラックであれば、審査に通過することは極めて難しいと言えるでしょう。

従業員や代表者の名義、会社名を変更する方法

従業員が退職したときには、従業員から追加カードを回収し、カード会社にその追加カードの解約を申し出る必要があります。

従業員Aから従業員Bの名義に変更するといったことはできません。

また、契約名義の会社名や代表者が変わった場合には、カード契約の名義変更の手続きが必要です。

基本的には「変更届」という書類を提出して、会社名や代表者名義を変更します。

この際に変更後の登記簿謄本などが必要になることも多いので、手続きについては事前に加入している法人カードのサポートデスクに確認しておきましょう。

個人名義の法人カードを名義貸しした場合のリスクとは

法人カードの名義貸しは次のような理由で簡単に起こりえますが、絶対に行ってはなりません。

「同じ会社だから名義が異なる他の従業員が使ってもバレない」
「経費の支払いのために代表者個人名義の法人カードを従業員に渡して決済させた」

このようなケースは小さな事業者であれば珍しくなく、簡単に名義貸しをすることが可能です。

しかし、いくら不正利用の心配がなくても、どんなに信頼できる人にカードを貸したとしても、名義人以外の人間がカードを使用した場合には間違いなく名義貸しです。

クレジットカード会社は、名義貸しについて規約で厳しく禁じています。

例えば、アメリカン・エキスプレス・ビジネスカードの規約には、次のように記載されています。

規約(第3条2)

『会員は、善良なる管理者の注意をもってカードおよびカード情報を管理、使用するものとします。カードは、カード表面にその氏名が印字または刻印されカード裏面に署名した会員本人だけが利用できるものとし、他人に貸与、譲渡、または質入れしてはならず、その他当社の所有権を侵害することはできません。』

そして、規約に違反したことがカード会社に知られてしまうと、カード契約を強制的に解約されてしまうリスクがあります。

「どうせ支払うのは法人口座からだから」「法人名義の契約だから」と、軽い気持ちで名義貸しをしてしまいがちですが、このような行為は絶対にしないようにしてください。

この記事のまとめ

法人カードの名義は、法人ではなく使用する個人になります。

法人カードの契約は法人名義であっても、カードそのものは会社に所属している個人に対して発行されるためです。

これはカードの不正使用を防ぎ、誰がいくら使ったのかの責任を明確にするためであり、会社にとってもメリットがあります。

クレジットカードは、名義人以外は絶対に使用することができないので、たとえ法人名義で契約しているカードであっても従業員間で使い回すことはできません。

従業員に法人カードを持たせたい場合には、必ず追加カード発行の手続きを行い、カードを使用する従業員個人の名義となるようにしてください。

名義貸しはカードの強制解約のリスクがあるので十分に注意しましょう。

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